最優秀賞
| 夜十時、受信トレイをチェックすると、バースデーDMに紛れて、一通のメールが届いていた。 <サトル、執筆は続けていますか。新しい作品を読む日を楽しみにしています> どうやら、送信日時を指定して綴ったらしい。亡き妻からのメッセージをしみじみとかみしめながら、僕は三年ぶりに万年筆を握った。 |
FUUさま(@fumi_acfy)
最優秀賞を受賞されたFUUさまには、副賞としてAmazonギフト5,000円分を進呈させていただきます!
審査員のコメント
最優秀賞、おめでとうございます!
誕生日の夜に届いた過去からのメッセージ。主人公は、止めていた創作活動を再開する。それはきっと妻が大好きだった彼の姿であり、きっと妻の死によって凍っていた時間だったのだろう。そうなることがわかっていたからこそ、妻は最後のメッセージとして未来を、そしてそれが可能なメールという手段を選んだのだ。恋を経て愛へと変わり、絆となった思いが、3年の時を経て主人公の人生にふたたび光を灯した。ひとりのクリエイターとして、またひとりの夫として、とても心を打たれる作品であり、140字以内という制限の中で、主人公と妻がともに過ごした時間までが走馬灯のように思い起こされる。まさに「メールと恋」というテーマに沿った文句なしの最優秀作品であると感じました。とても美しいドラマを見せていただきました。ありがとうございました!
川上サトシ(マーケター・ライター)
メールが届いた「三年後」という設定がとてもリアルで、まるで奥さんが未来まで優しく見通していたかのように感じました。奥さんがサトルさんのことを深く理解していて、長い年月を一緒に過ごしてきた信頼や愛情が伝わってきます。切なさだけでなく、どこかあたたかさや未来への希望も感じられる終わり方で、読んだあとに想像が広がりました!短いながらも二人の関係が浮かび上がる、余韻のある作品でした✨
宇都宮凛奈(ライター)
亡くなってもなお、主人公の心を「メール」という形で支え続ける奥さんの愛。
そして、亡くなって三年経ったいまでも奥さんを愛する主人公。
変わらぬ2人の愛が一文字一文字に、しっかりと込められている。「愛」「好き」という言葉はひとつも出てこないのに。
素晴らしい表現力だと思います。
目頭が熱くなりました。
川上あおい(ライター)
優秀賞
| 電子の世界なんて、滅びてよ。 君と別れて半年。 それでも「おはよう」に口角が上がる。 「会いたい」に涙が落ちた。 消せない恋を、私は今日もスクショして保存する。 滅びてよ、電子の恋。 |
語り部・よだかさま(@yodaka_stoy)
審査員のコメント
優秀賞、おめでとうございます!
詩のリズムに乗せて歌われる嗚咽。どうしても保存してしまう過去のメッセージ。人間の理性はどうして、こうも無力なのか。恋という本能はどうして、こうも残酷なのだろうか。もしいまが現代でなければ、こんな思いはしていないのかも。答えのわかりきった、けれどもそう思ってみたい、彼女の胸のうちが伝わってきました。切ない。そして音楽が聞こえるような、美しい詩。一度拝読してから、ずっと心に残った作品です。
川上サトシ(マーケター・ライター)
別れたあとも形として残ってしまうからこその苦しさが、とてもリアルでした。本当は忘れなきゃいけないとわかっているのに、どうしても消せなくて、むしろスクショまでして残してしまう…そのジレンマが人間らしくてイイ!前に進みたい気持ちと、まだ手放せない想いが混ざり合う切なさに共感される人も多いのではないでしょうか。恋する乙女たちに幸あれ!
宇都宮凛奈(ライター)
わたしは「電子の世界なんて、滅びてよ。」「滅びてよ、電子の恋。」という、まるで広告のキャッチコピーや音楽のサビ歌詞のような破壊力ある一文に完全に心を撃ち抜かれました。切ない恋心が情熱的な表現で描かれていて、素敵です。
川上あおい(ライター)
ほっこり賞(3作品)
こちらは「ほかほか、笑みがこぼれる作品」に捧げる賞です!
| 「お父さんはメールアドレスって持ってないの?」 78歳になる母が父に尋ねた。 スマホをプレゼントしてから母は使い方を少しずつ覚え、ゆうべメールの使い方を教えたのだ。 「…」口を濁す父。 「教えてくださいよ」チラシの裏とペンを持つ母。 「いつも目の前に居るだろ」 「一番めに登録したいのよ」 |
筆屋 敬介さま(@fudeyaksk)
宇都宮凛奈硬派っぽいお父さんと率直なお母さんにキュン♡
これからどんなメールをするんだろう💭
| 野に咲く花たちは、夜空に煌々と輝くお月様に恋焦がれています。いつかお月様のそばに飛んでいけたらと思い切ってメールしてみました。それならばとお月様は自分の身を削り、小さな金色の羽根をたくさん花たちに贈リました。その羽根をつけて花たちがお月様のもとに飛んでいったのは言うまでもありません。 |
野村千恵美さま(フォームからのご応募)



最初の言葉から作品の世界観に吸い込まれ、
心地よくその世界を漂わせてくれる。
あたたかくて優しい作品。素敵です。
| 『彼氏と別れた。飲み行こ』 誤送信に気づいたのは、エンターを押した直後だった。 To欄の表示は桜井 由美。私の係長。同期と同じ苗字のせいでミスった。 業務時間中、社用メールの私的利用。お説教確定、ほんと最悪。 返信が来た。どうにでもなれと思ってクリックした。 『私も。行こ』 |
いっぱんねこめいと🥀🎀@百合小説書きのすがたさま(@ippannekomeito)



きっかけさえあれば、
イヤと思っていた相手とも友達になれるのかも。
希望にあふれたドラマでした!
青春賞(3作品)
こちらは「思わず胸キュン…な青春作品」に捧げる賞です!
| 10年ぶりに、学生時代の親友と会って、カラオケのあるバーに行った。 「せっかくなら懐かしい曲歌おうよ」って、ノリで入れた曲。すっかり忘れてたけど、中学の頃に大好きだった子からのメール受信音にしてた曲で。 頭ん中の奥の方からじんわり広がってくる甘い匂いに、歌いながら泣きそうになった。 |
仁科ナナさま(@77sb7)



流れるように情景が浮かび、自然と感情移入してしまいました😭
最後の一言が切なくて心にじーん…
| 「アプリの調子が悪いから」と言われても、メールは初めてだから緊張してしまう。僕はただ雨上がりの虹を撮った写真を君に見てもらいたかっただけ。件名なんてたいそうなものはない。少し迷ってから「件名:虹」を消して「件名:きれいだったから」にする。それだけで妙にドキドキした。 |
増田正二さま(フォームからのご応募)



「虹」からの変更。それだけでドキドキ。
青春時代を思い出せる素敵な作品!
| 朝の電車、いつもの席に座って、カバンを横置いて、いつもと同じ時間に彼女からメール「どこ?」「いつものとこ」数十秒後にいつもの笑顔で「ありがとう」って俺の横に座ったね。 付き合ってるわけじゃない。卒業して、いつものメールがなくなって、大好きだって気が付いた。 |
桃薗智さま(フォームからのご応募)



電車×メール×恋!まさに青春ですね><✨✨
卒業してから自分の気持ちに気づいた、という最後の一文に、
大人へと成長するその瞬間が描写されている気がして…きゅん!!><
感動賞(3作品)
こちらは「こころが震える作品」に捧げる賞です。
| 妻が余命宣告を受けてから、LINEではなくメールに替えようと言ってきた。理由を訊くと「こっちの方が丁寧に話せる」とのことだった。 驚いたことに妻の死後もメールが届いた。予約送信か。これが本当の理由か。 何となく返信してみると翌週にもメールが来た。僕はまた返信する。あの頃みたいだね、と。 |
高樫 陽雪 #140字小説 /公募勢さま(@youse2_takaga4)



奥さんのあふれるやさしさに涙😭
メールならではの仕掛けが素敵です✨
| 眠ったままで起きなかった父に、今までメールなどしなかった母がどうしてもメールしたいと。 おぼつかない指で一文字一文字思いを込めるように打った。 ありがとう。お父さんと出会えてしあわせ。まっててね。 |
鈴木えり子さま(フォームからのご応募)



最後の一文が、リアル。
自分だったら、やっぱりシンプルに伝えたい。
こんなふうに。
| メールは、知らぬアドレスから届いた。 「こにちは」「だいすち」。 たどたどしい言葉で、3年分の恋とごはんへの感謝が綴られていた。 いたずらだと決めつけて、無視した日の夜更け。 暗い部屋でPCを叩く小さな小さな影。 送り主は、ハムスターの銀助だった。 |
雨子さま(@book_cover_100)



銀助くーーーーーん😭😭😭✨✨✨
とくに、ハムちゃんと過ごしたことのある方には
たまらない作品だと思います😭
面白賞(3作品)
こちらは「思わず笑ってしまう面白作品」に捧げる賞です。
| 『すしです』幼馴染の亮介から寿司になったとのメールが届いた。何の寿司になったのかな?と思っていたら目の前に人間の亮介が息を切らして来た。『白奈、俺はお前のことがーー』あれから数年後、私達はお揃いの指輪をつけて寿司を食べてる。 うん、玉子最高! |
オカンさま(@yo41qPck8eLLhut)



終始心を鷲掴みにされました!!
面白くて、ほっとあたたまる、本当に素敵な作品だと思います。
とくに『すしです』という初めの一文は、
いまも頭に焼き付いて離れません♪
| 私は幸せ者でした。 遠距離のときは夜行バスで会いにきてくれて、会いにいったら優しく迎えてくれて。 この人となら、ずっと幸せなんだろうなって。 けど、一緒になって、わからなくなりました。目玉焼きはケチャップ派。オムライスはデミグラス派。ぜんぶ逆なんです。実家に帰らせていただきます。 |
佐藤朝槻さま(@st_astk)



シリアスな始まりでドキッとしたら、
まさかのギャグ落ち!(笑)
| 「もうメールしないでください」 良い感じだった女の子からそう通告がきた。 「わかりました、さようなら」と送ると 「これからは電話してくださいって意味です」と返信が来た。 俺はこの時点で致命的な相性の悪さを感じ 「もうメールしないでください」と送った。 |
新都 蘭々@📖さま(@neet_ranran)



面白大どんでん返しを楽しませていただきました!
この発想はなかった!
ホラー賞(3作品)
こちらはゾクゾクが止まらないホラーな作品に捧げる賞です。
| とある配信者の話。 最近、ある視聴者から毎晩1通のDMが届く。内容は毎回一言で、「いつも見てます」「♥️」「おはよう」「ㅤ」など全10種類。 ある日、配信者は古い順にそれら1通ごとの文字数を数えメモした。数列は配信者の誕生日や郵便番号と一致。警戒し部屋を見渡すと例の視聴者から長文が届いた。 |
無知文盲さま(@Patisserie_Sasa)



長文には何が書かれていたのか…
想像が広がって怖さが増します😱
| 『会いたい』 一言だけのメール。 だけど彼女の気持ちが痛いほど伝わってくる。 もう3日も会ってない。 我慢できないよね。 僕もだよ。 同じ気持ちで嬉しい。 身だしなみを整えて。 彼女のために作ったスープを持って。 地下室に繋がるドアを開けた。 鎖の音と、立ち込める異臭。 会いたかったよ。 |
基維ひなたさま(@Hinata_Motthi)



地下室、監禁、ザ・ホラー!
携帯だけ渡してメッセージを送らせる猟奇性もGood!
| 「おはよう^^課題やった?」 メールはいつも疑問系。彼からの返事をいつも待っていた。 長い間しまっていたピンクの携帯をひらく。あの時の私がメールボックスには詰まっていた。 大好きな彼。私の旦那さん。 携帯の電源を落として「不用品」の箱に放り投げる。明日から私は自由だ。 |
たけダンディズムさま(@takemushi55)



急な展開にゾクッとしつつ、
なぜだか少しスッキリとした心地がするのは私だけでしょうか?😊
ずーん賞(3作品)
こちらは「今を大切に生きようと思わせてくれる作品」に捧げる賞です。
| 「あなたが好きです」 昨日、意を決して書いたものの、送る勇気の無かったメールを送信した。 着信音はすぐに返ってきた。 「あそこですね」 救助隊の人達がスコップやジャッキ等の救助用の重機を持って走る背中を、瓦礫の前で僕はただ、呆然と眺める。 僕の初恋はこうして、終わった |
神野オキナさま(@OKina001)



読み終わって、言葉が出てきませんでした…。
現実の残酷さを再確認させていただきました。
| 「おばあちゃんになった美咲が見たい」 祐輔からのメールだ。 「えっ!何?」 恋愛感情がありながら、友達以上になれない美咲。10年もこんな関係が続いている。まさか、これはプロポーズ?確かめたい気持ちが揺れた。しかし、その続きのメールのやり取りはなかった。 2人はずっと友達のままだった。 |
ロコ 美しいことば 美しいひとさま(@Roco53384816)



読み終わった後に美咲ちゃんと同じことを言ってました!
一体なんなの~!?
| 「これからよろしく」 「今日はめっっちゃ楽しかった!」 「急だったからビックリ。でも……嬉しい」 「一生一緒、だよ?」 「ねぇ……出張ってなんでそんなにあるの?」 「早く養育費振り込んでくれないかな?」 Mail Delivery Subsystem<MAILER-DAEMON> |
矢島好喜さま(@koki_yajima)



とてもリアル😭
相手からのメッセージの時系列に並べるという発想!
素晴らしいと思います。
SF賞(3作品)
こちらは「想像力を掻き立てられるSF作品」に捧げる賞です。
| このメールは3万年後にちゃんと届くかなって思いながら書いてます。本当は明日にも読んで欲しい。でもそうならないことにほっとしていたり。ダメだな私。見送ったとき、ちゃんと言えば良かった。どうか私を思い出して。地球に帰るあなたにはほんの1カ月前のことだから。もういない私から、愛を込めて。 |
冬寂ましろ☃百合とか系物書きさま(@toujakumasiro)



悲しい運命と一途な愛に感動しました😭
バックストーリーが気になる👀
| 「これまで、ぼくはきみの言葉に笑わされ、泣かされ、癒され、背中を押されていた。今度はぼくもきみにたくさん言葉を送りたい。ぼくの声で」 彼女からすぐ「入って」と返事があった。胸が弾む。扉を開く。 巨大な機械が唸っていた。ディスプレイに大きな文字が表示されていた。 「メールで十分だよ」 |
山根利広✎☡さま(@sousakutc)



まさにSF!きっぱり断ることができかった
彼女の葛藤も切ない。
| 一通の誤送信メールから始まった彼女とのやり取りは、いまだにメールだ。なぜかSNSを知らず、毎回大量の絵文字を送ってくる不思議なひと。そんな彼女から流行りの映画を観に行こうと誘いがきた。渋谷駅に広告が出ているらしい。添付画像を開き、僕は息を呑んだ。それは20年も前の映画だった。 |
龍野 陸さま(@Riku_Tatsuno)



時空を超えた恋…素敵です><✨✨
最後の一文での急展開、最高ですね。
ゾクッとしました!!
【総括】140字作文コンテストの感想と開催の想い
| 「作りたい。」「伝えたい。」 創作のエネルギーというものは、常に人智を超えます。 その発電性をもって、現代をさらに生きやすくしたい。 私自身も、幼少より文芸と音楽をしている人間。 だからこそ言いますが、表現者というのはやはり、渇望の存在です。 大通りの端で抑圧と解放を繰り返し、どうでもいい人の言葉に傷つき、いつの間にか、まるでテトリスの「Z」みたいな形のアレのように、社会にハマるふりをして、あるいは全くハマれないで生きている。 そんな普通になれなかった人たちが「伝えたい」を実現できるような、たとえ小さくてもそんなムーブメントを起こしたい。 そのような気持ちで個人的にも活動をしています。 そしてコンビーズは「伝えたい人のために、つくる」をテーマに、メッセージの伝達手段であるメール配信ツールを開発している企業。 縁あってここにいる私が、私にしかできないアクションとして、今回の創作イベントを実施することにいたしました。 企業という視点で見ればおそらく型破りなキャンペーンでしたので、当初はかなり張り詰めて進捗を確認しておりました。 しかし日に日に、ご応募の数は増えていきます。 生きている同志の息遣い。確かにここに在るのだと安心しました。 そして結果、当初の宣言目標であった数とは桁違いの、全1331作品ものご応募をいただき、第一弾のイベントは大成功を収めることとなりました。 当然、1331のエネルギーをたった3人の運営チームで受け止めるにはかなり体力が必要。 しかし、ときには慄き、ときには楽しみ、ときには泣いてしまうような素晴らしい作品に出会うことができました。 これは、まだまだ始まりにすぎません。 社会全体に創作のエネルギー旋風を巻き起こす。 つまり、イベントは続けるつもりです。 その記念すべき第一回目の開催にご参加いただけたこと、まことに嬉しく思います。 「140字作文コンテスト」は、またこの冬に開催します。 ぜひその時も、素敵な息遣いを送っていただけたら幸いです。 |
企画委員長:川上サトシ(ルリニコクみみみ)
本当に沢山のご応募、ありがとうございました!!



