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企業の戦略分析

ドン・キホーテ「経営は表現」という戦略

なぜ午前2時でも人はドンキに吸い込まれるのか。圧縮陳列、現場主義のPOP、24時間営業――混沌に見える売り場の裏にある一貫した思想を「経営は表現」という視点から分析。700店舗規模でも増収を続ける理由に迫る。

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午前2時。
ほとんどの店が閉まり、街の明かりは目を閉じる。

だからこそ、ドン・キホーテには人が入っていく。
ネオンは明るく、店内はにぎやかで、棚はぎっしりと商品で埋まっている。

ドン・キホーテには人気がある
実際に、2025年の6月決算では
36期連続の増収増益を成し遂げている。

ここで疑問がひとつ。

いくら深夜にやっているからといって、
いまの時代にこれほどの成長を遂げられるものなのだろうか。

街には、ほかにも蛍光灯を輝かせる商店が、少なからず転がっている。

画像:ドンキ公式facebookより引用

なぜだろうか。

価格が安いから?
品揃えが多いから?

それもたしかに、理由だろう。
しかし、ドンキの強さは、単なる安売りでは説明できない。

あの空間には、買い物以上の「体験」がある。
圧縮陳列、手書きのPOP、迷路のような導線
整ってはいないが、どこか高揚感がある。

ドンキは商品を売っていると同時に、
“その場の空気感”を売っているのではないか。

ここで、ドン・キホーテの経営を
「表現」という視点で読み解いていきたい。

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なぜ、ドンキは“整えない”のか

画像:ドンキ公式facebookより引用

── 圧縮陳列というビジネスモデル

ドン・キホーテの売り場に入ると、まず感じるのは情報量の多さだ。
棚は高く積まれ、商品はぎっしりと並び、通路は決して広くない。

一般的な小売業が目指すのは「見やすさ」や「整然さ」だ。
余白をつくり、導線を整理し、商品をカテゴリーごとに美しく並べる。

その常識から見れば、ドンキの売り場は真逆にある。
だが、これは単なる“雑然”ではない。
意図された設計である。

いわゆる「圧縮陳列」は、商品点数を最大限に見せることで
「何か見つかるかもしれない」という期待を生む。

通路を進むたびに視界が変わり、
予定していなかった商品が目に入る。
結果として滞在時間が伸び、衝動購買が生まれる

整えないことで、発見をつくる。
効率よく“目的買い”をさせるのではなく、
偶然との出会いを設計している。

ドンキの売り場は商品を並べる場所というより、
体験を起こす装置に近い。

整然さを捨てることはリスクでもある。
しかし同時に、それは強い個性になる。

圧縮陳列は見た目の問題ではない。
それは、ドン・キホーテのビジネスモデルそのものなのである。

“うるさいPOP”が売上になる理由

画像:ドンキ公式facebookより引用

── 現場主義という経営戦略

売り場で、もうひとつ目を引くのがPOPだ。
ドンキには、各店舗ごとに「POPライター」と呼ばれる担当者がいる。

手書きの文字
やたらと多い感嘆符。
「店長ガチ推し」「今だけ本気価格」といった勢いのある言葉。

静かな高級店とは対照的に、
ドンキの売り場はとにかく、しゃべる

一見すると統一感はない。
だが、この“うるささ”こそがドンキらしさになっている。
なぜか。

理由は、POPが本社主導の広告コピーではなく、
現場から生まれているからだ。

ドンキは店舗ごとの裁量が大きい。
仕入れも、売り場づくりも、演出も、
現場が判断できる余地がある。

だからPOPにも、その店の温度が乗る。

担当者の言葉で語られた商品は、単なる価格情報ではなく、
“おすすめ”として伝わる。

その結果、
価格競争だけではない購買動機が生まれる。

実際、2024年6月期には売上高2兆円を突破し、
営業利益も大きく伸ばしている。

派手なPOPは演出に見えて、
きちんと業績に結びついている。

重要なのは、POPが上手いことではない。
表現が許されていることだ。

お菓子の売り方も個性的!(画像はドンキ公式facebookより引用)

現場主義という経営戦略が、
売り場に「人の声」を残す。
そしてその声が、売上になる。

ドンキのPOPは装飾ではない。
組織の思想が、紙に表れたものなのである。

混沌なのに、なぜ増収を続けられるのか

── 700店舗を動かす組織の設計

売り場は雑多である。

POPは自由。
店舗ごとに雰囲気も違う。

それなのに、業績は安定して伸びている。

親会社であるパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス は、
2024年6月期に売上高2兆円を突破。

店舗数は国内外あわせて742店に達した。
規模だけ見れば、巨大チェーンだ。

通常この規模になると、標準化が進む。
マニュアルが増え、自由度は下がる。

だがドンキは、完全には均質化しない

その理由は、“分権型の設計”にある。

店舗ごとに仕入れや売り場づくりの裁量を持たせつつ、
本部は数値管理と大枠の方針で全体を支える。

現場が表現し、本部が収益構造を整える

自由と管理を、切り分けている。
混沌を許しているように見えて、
収益の仕組みは極めて合理的だ。

例えば、

大量仕入れによる価格競争力、
PB商品の強化、
店舗フォーマットの複数展開など、

収益基盤はしっかり構築されている。

つまり、売り場は自由でも、利益構造は計算されている

ドンキは、「秩序を隠した混沌」をつくっている。

そしてその設計が、700店舗規模でも増収を続けられる理由である。

ドンペンは単なるマスコットではない

画像:ドンキ公式HPより引用

── ブランドはロゴではなく「態度」でできている

黄色い体に、青い帽子。

ドン・キホーテの店頭や売り場で見かける「ドンペン」は、
一見すると親しみやすいマスコットだ。

だが、その役割は単なるキャラクターにとどまらない。

圧縮陳列で情報量の多い売り場。
にぎやかなPOP。
少し騒がしい音楽。

その中心に、いつも同じ顔で立っているのがドンペンだ。

画像:ドンキ公式facebookより引用

混沌の中に、ぶれない存在がある。
それだけで、空間に一貫性が生まれる。

ブランドとは、ロゴやデザインの統一だけではない。
「この会社は、どういう態度をとるのか」という姿勢の積み重ねだ。

ドンキの場合、それは明確だ。

整えすぎない。
遠慮しない。
楽しさを隠さない。

その態度が、ドンペンという人格に宿っている。

海外ブランド「DON DON DONKI」でも、
この世界観はほとんど変わらない。

売り場のにぎやかさも、キャラクターも、そのままだ。

画像:ドンキ公式HPより引用

現地向けに洗練させすぎない。
“ドンキらしさ”を削らない。

それでも店舗は増え、
アジアを中心に拡大を続けている

輸出しているのは、商品だけではない。
ブランドの態度そのものだ。
ドンペンは、その象徴である。

だから彼は、単なるマスコットではない。
ドン・キホーテという企業の人格を体現する存在なのである。

画像:ドンキ公式facebookより引用

なぜ、ドンキは深夜でも売れつづけるのか

「夜がさみしいなら、ドン・キホーテにおいでよ」
画像:ドンキ公式HPより引用

── 24時間営業に込められた時間戦略

ドン・キホーテの強さを語るとき、
忘れてはいけないのが「時間」だ。

多くの小売店が20時や21時に閉店する中、
ドンキは創業当初から深夜営業を打ち出してきた。

昼の競争に正面から挑むのではなく、
“夜”という市場を選んだ。

そこにいたのは、
若年層やナイトワーカー

誰もが昼に動くわけではない。
その前提に立った時間設計だった。

現在も、多くの店舗が深夜営業、あるいは24時間営業を続けている。

もちろん、立地によって営業時間は異なるが、
「いつでも開いている」という印象は強い。

深夜営業は単なるサービスではない。
それは、生活リズムの多様さを肯定する姿勢だ。

昼型の社会に合わせるのではなく、
夜に動く人たちの側に立つ。

その態度が、“安心感”や“つい立ち寄ってしまう理由”につながる。

時間はコストでもある。
人件費や光熱費はかかる。

それでも続けるのは、
ドンキにとって時間が「戦略」だからだ

何時に店を開け、何時に閉めるのか。
それは単なる運営判断ではない。

どんな人に寄り添うのかという、経営の意思表示である。

ドンキは、空間だけでなく、
時間でも自分たちの世界観を表現している。

売上2兆円は結果にすぎない

夜市のような店内!(画像はドンキ公式facebookより引用)

── ドン・キホーテが証明した「経営=表現」

パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは
数字だけ見れば、巨大流通企業だ。

営業利益も過去最高水準を更新し、店舗数は700を超える。

だが、この規模感だけでは
ドン・キホーテの本質は説明できない。

思い返してみると、
彼らがやってきたことは一貫している。

整えない売り場。
感情のこもったPOP。
現場に委ねる組織。
海外でも変えない世界観。
そして創業時から続く深夜営業。

それぞれはバラバラに見えるが、
根底にあるのは同じ姿勢だ。

「どう儲けるか」よりも、「どうありたいか」を先に決めている。

その姿勢が、やがて数字として現れる。
売上2兆円は目標ではなく、結果だ

ドン・キホーテが示したのは、
経営とは単なる効率の最適化ではないということだ。

経営とは、世界観の実装である

どんな空間をつくるのか。
どんな言葉を使うのか。
どんな時間を選ぶのか。
そのすべてが表現であり、
その表現が支持されれば、数字は後からついてくる。

ドンキは、それを証明したのだ。

ドンキの面白い施策、まとめてみた

majicaアプリを“会員×販促×データ”のハブにしている

売り場のカオスが注目されがちだが、
ドンキの施策はアプリの中にもある。

中心にあるのが「majica」だ。

会員証であり、決済手段であり、
クーポンの配布窓口であり、
レビューやレシートの確認場所でもある。

顧客接点をひとつに束ねる設計になっている。

クーポンの配り方が上手い

majicaでは、会員ランクやキャンペーン条件によって
取得できるクーポンが変わる設計になっている。

一律配布ではなく、条件に応じて差がつく。

さらに、キャンペーンによっては
「残り◯枚」と表示される仕組みもある。

画像:公式アプリより引用

値引きというより、利用を促す“演出”が組み込まれている。
安さそのものではなく、使い方の設計が特徴的だ。

電子レシートで顧客のデータを集める

レシートは紙だけでなく、アプリ上でも確認できる。

会計時にmajicaを提示するだけで、購入履歴がアプリに紐づく。

便利さの向上であると同時に、
購買履歴が蓄積される仕組みでもある。

結果として、顧客の行動データが可視化される。

体験を損なわずに、
次の施策につながる情報が集まる構造だ。

マジボイス(正直レビュー)の公開

画像:ドンキ公式HPより引用

majicaでは、商品ごとの評価や口コミを閲覧できる。

特徴的なのは「人気商品」だけでなく、
評価の低い商品についても公開している点だ。

公式FAQでも、
いわゆる“ビミョー評価”の商品を確認できることが説明されている。

通常は隠したくなる不満を、あえて見せる。
その声を商品改善に活かす仕組みも用意されている。

現場主義と顧客の声が、ここで接続しているのだ。

偏愛めし(ニッチに刺す惣菜ブランド)

画像:ドンキ公式HPより引用

「みんなの75点より、誰かの120点。」

このコンセプトを、公式が正面から掲げている。

万人受けを目指さない。
むしろ、好きな人に深く刺さることを優先する。

それを惣菜ブランドとして形にしたのが「偏愛めし」だ。

レシピもテーマも、どこか尖っている。
だが、それがいい。

売り場の圧縮陳列と同じく、
整えるよりも、個性を立たせる。

ドンキの“らしさ”を、商品そのものに落とし込んだ例といえる。

産学協働 × 偏愛めし(学生の偏愛を商品化)

画像:ドンキ公式資料より引用

偏愛めしは、大学との協働プロジェクトも行っている。

学生アンケートをもとに、おにぎりなどの商品を共同開発し、
実際の品揃えに反映させる取り組みだ。

ターゲットの「好き」を、外から分析するのではない。

当事者の”好き”という感情を、
マーケティングの材料ではなく、商品づくりの出発点にしている

万人に合わせない。
刺さる人の熱量を信じる

偏愛めしは、その思想を
もっとも分かりやすく体現している。

情熱価格(PB)を“ネタ化”して伸ばす

※PBとは、Private Brand(プライベートブランド)の略で、小売企業が自社で企画・開発した商品を指す。

ドンキのPB「情熱価格」は、
単なる低価格商品のラインではない
売れている、という事実だけで終わらせない。

自社でヒット商品を表彰する企画を行い、
「SNSバズり部門」なども設けている。

実際に、その部門で情熱価格の商品が1位を獲得した例もある。

PBを裏方にしない。むしろ、話題の中心に置く。

価格だけでなく“語りたくなる要素”を加えている。
パッケージも、ネーミングも、
ときに大胆で、ときに少し遊びがある。

安さで選ばれるのではなく、面白さで広がる。
PBを商品としてではなくコンテンツとして扱う

その発想が、情熱価格を伸ばしている。

キャンパスドンキ(ウォークスルー決済/無人小型店)

画像:ドンキ公式HPより引用

ドンキといえば、にぎやかな売り場。
だが一方で、静かな実験もしている。

そのひとつが「キャンパスドンキ」だ。

大学構内に設置された小型店舗で、
majicaアプリで認証入店し、AIが商品を認識する。

レジに並ばない。
会計操作もしない。
商品を持って退店すれば、決済が完了する。

カオスな売り場の印象とは対照的に、仕組みは極めて合理的だ。

注目すべきは、場所である。
舞台は大学構内。

つまり、若年層の生活導線のど真ん中だ。

時間をかけたくない。でも、ちょっと何か買いたい。
そのニーズに対する、ドンキらしい答えがここにある。

圧縮陳列で滞在時間を伸ばす戦略と、
レジレスで時間を短縮する戦略。

一見すると逆に見えるが、
どちらも「生活に入り込む」という点で一貫している。

ドンキはカオスだけでなく、効率をも突き詰める
その両立が、この実験には表れている。

コラム|ドンキの戦略をメルマガに応用すると?

ここまで見てきたドンキの戦略は、
小売の話でありながら、実はメディア運営にも応用できる。

とくにメルマガは、“売り場”に近い。

空間が文章に変わるだけで、やっていることは似ている

では、どう応用できるのか。

① 思いがけない話題を混ぜる

ドンキは、整然さよりも発見を選ぶ。
メルマガも同じだ。

きれいにカテゴリー分けされた“正しすぎる構成”よりも、
思いがけない話題が混ざっているほうが
読者の滞在時間は伸びる

予定調和ではなく、偶然の出会いを設計する。

毎回テーマを固定しすぎない。
ちょっとした脱線を許す。

それだけで、メルマガは“読まれる場所”になる。

② 書き手の温度を件名に乗せる

ドンキのPOPは商品説明ではなく、感情の表現だ。
メルマガでいえば、それは件名や冒頭の一文にあたる。

情報を並べるだけでは、開封されない。

少し熱量を乗せる。
少し言い切る。
少し個人的にする。

“正しい文章”より、“その人の声が聞こえる文章”

現場主義のPOPが売上につながるように、
書き手の温度は開封率につながる。

⑤ 配信時間にもこだわりを持つ

ドンキは、昼ではなく“夜”を選んだ。

競争が少なく、自分たちが活きる時間帯を選んだ。
メルマガも同じだ。

・BtoBなら、始業前の8:00前後か

・個人向けなら、通勤時間や21〜22時台か

・主婦層なら、家事が落ち着く時間帯か

読者が“スマホを見ている瞬間”に合わせる。

さらに重要なのは、時間を固定することだ。

毎週火曜の朝。
毎月1日の夜。

「またこの時間だ」と思われることが、習慣化につながる。

結局、何を真似すべきか

安さではない。派手さでもない。

真似すべきなのは、「どうありたいか」を先に決める姿勢だ。

“読まれるテクニック”より先に、
“どんなメディアでいたいか”を決める。

経営が表現であるなら、メルマガもまた、表現である。
そして表現は、設計できる

まとめ

ドン・キホーテは、安さで勝った企業ではない。

“整えない”という選択を貫き、売り場・時間・組織・ブランドすべてを通して、一貫した態度を表現してきた企業だ。

一見バラバラに見える施策も、根底ではつながっている。

圧縮陳列 = 混沌ではなく「発見の設計」

うるさいPOP = 装飾ではなく「現場の声」

24時間営業 = サービスではなく「時間の意思表示」

ドンペン = キャラクターではなく「企業の人格」

共通しているのは、「どう儲けるか」よりも
「どうありたいか」を先に決めていること。

その姿勢が、空間に、言葉に、組織設計にあらわれ
やがて数字として着地する。

売上2兆円は目的ではない。
世界観を実装し続けた“結果”にすぎない。

経営とは、効率の最適化だけではない。
経営とは、表現である。

ドン・キホーテは、それを700店舗規模で証明している。

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この記事のライター

川上あおい

3児の母。株式会社コンビーズのライター。メルマガも担当。24時間、車を運転したことがある。

この記事の監修

川上サトシ

合同会社ぎあはーと 代表

Webマーケター。
ヴァイオリニストとして活動していた20代の頃、Webマーケティングの重要性を痛感。骨董品のEC管理や食べログの営業を経て、Webコンサル会社のマーケティング担当となる。引っ越し企業のサイトをSEO施策により【半年で1万PVから20万PVまで成長させる】、上場アパレル企業の【売上を1年で3倍にする】など数多くの実績を残して会社設立。専門はSEOと広告運用。
ルリニコクのヴァイオリニストとしても活動中。

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