「国内市場だけではもう伸び悩む…」
「海外への事業展開、具体的にどうすればいいんだろう?」
このような悩みを抱えているのなら、ぺんてるのグローバル戦略がきっと役に立つはずです。
国内市場メインの文具メーカーだったぺんてるが、いかにして世界市場で成功を収め、海外売上が全体の7割以上を占めるまでに至ったのか。
彼らの戦略を学ぶことで、海外事業を軌道に乗せ、社内での評価を高め、個人のキャリアを加速させるための具体的な手がかりが見つかるはずです。
今回はその具体的な戦略と、自社の海外事業を成功させるための実践的なヒントを詳しく解説します!
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ぺんてるが世界で愛される理由とその戦略
1946年の創業以来、「世の中にないものを開発し、新たな需要と市場を創造する」という信念を掲げてきたぺんてる。
その独創性と「日本製」の品質が、どのようにしてグローバル市場で確固たる地位を築き上げたのでしょうか。
スピーディーな海外進出
ぺんてるは、1953年という日本の企業としては非常に早い段階で海外市場への進出に踏み切りました。
これは当時の業界慣習から見ても異例の速さで、創業者の堀江幸夫氏が抱いていた「世の中にない新製品をつくれば必ず大ヒットする。世界中でいっぺんに売れてしまう」という強いグローバル志向が背景にありました。
この積極的な姿勢はすぐに実を結びます。
1960年代には、世界初のノック式シャープペンシル「ぺんてる鉛筆」や油性ペン「ぺんてるペン」といった革新的な製品を次々と世に送り出しました。
特に1963年に発売された「ぺんてるサインペン」は、その品質と使いやすさから国内外で爆発的な人気を博し、当時のジョンソン大統領(米)にも愛用されたことで大きな話題を呼びました。
参照:https://www.pentel.co.jp/products/pen/pentel_signpen/
このサインペンの成功は、ぺんてるがグローバル市場で確固たる地位を築き、その後の海外展開を大きく加速させる決定打となったのです。
文具だけじゃない!技術を活かした事業の広がり
参照:https://mouhitotsuno.pentel.co.jp/about/
ぺんてるの事業は、単なる文具製造に留まりません。
長年にわたり培ってきた精密な技術を活かし、その事業領域を大きく広げています。
具体的には、筆記具製造で培われた微細加工やインクの精密制御といった技術が、そのままペンタッチ入力装置や産業用精密組立ロボット、さらには医療機器の微細部品といった分野に応用され、ぺんてるの多角的な強みとして築き上げられているのです。
この戦略は、文具事業を安定的な収益基盤としながら、将来の新たな成長源を複数確保することを目的としています。
これにより、特定の事業に依存するリスクを分散し、グローバル市場における新たなビジネスチャンスを創出する狙いがあると考えられます。
数字が語る!グローバル事業の成長
参照:https://www.pentel.co.jp/corporate/about/
ぺんてるのグローバル事業は、まさに会社全体の成長を主導しています。
2011年度には海外売上高が全体の60%を占めていましたが、2023年度にはなんと70.4%にまで増加。
これは、国内市場が縮小傾向にある中で、ぺんてるが真のグローバル企業へと成長した確かな証拠です。
現在、世界中に20か所の販売会社と7ヵ所の生産拠点を持ち、120以上の国や地域に製品を輸出しています。
参照:https://www.pentel.co.jp/recruit/atfirst/strategy/
もはや「日本企業が海外展開している」という段階ではなく、「グローバル企業として、日本はその拠点の一つ」という段階へと移行しているのです。
ぺんてるのグローバル戦略から学ぶ実践術
ぺんてるの成功は、大企業だからできた特別なことではありません。
彼らの戦略には、自社でも応用できる実践的なヒントが隠されています。
「日本製」の品質を保ちつつ、現地に合わせる柔軟さ
ぺんてるのグローバル戦略の核にあるのは、創業以来の理念と、世界中で高く評価される「日本製」の品質です。
海外市場において、日本の技術力と独自の製品開発力は大きな強みとなり、ぺんてる製品への厚い信頼を築いています。
しかし、彼らは単に日本向けに開発された製品をそのまま海外で販売するわけではありません。
各国の文化や人々の嗜好は多様であり、そこに合わせた柔軟な対応が不可欠だとぺんてるは認識しています。
そのため、それぞれの国・地域に合わせた製品開発やマーケティング戦略を展開し、「表現するよろこび」を世界中に広げています。
例えば、台湾市場では、政府が新たに定めた規制に適合した消しゴムを他社に先駆けて市場に投入し、現地のニーズに迅速に対応しました。
また、製品を提供するだけでなく、親子向けの絵画教室を開催するなど、単なる文具メーカーの枠を超え、現地の文化に根ざした活動を通じて顧客との関係を深めています。
このように、「日本製」の品質を揺るぎない基盤としつつ、徹底した現地適応戦略を組み合わせることで、ぺんてるはグローバル市場での競争優位性を確立しているのです。
香港市場をテストの場に活用
ぺんてるが1960年代に進出した香港市場は、新製品のテストマーケティングの場として積極的に活用されてきました。
この市場は、流行の移り変わりが非常に速く、顧客の反応もスピーディという特徴があります。
そのため、ぺんてるは新製品の成果が出ない場合でも、半年程度で早めに撤退するといった迅速な意思決定を行い、改善サイクルを高速で回しています。
このスピード感のある対応は、変化の激しいグローバル市場で成功を収める上で非常に重要な鍵となります。
香港でのテストを通じて得られた市場の反応やデータは、他の地域への展開戦略を練る上での貴重な知見となり、効率的な製品開発やマーケティング戦略に役立てられているのです。
製品を超えた「楽しい体験」の提供
国内外の市場において、ぺんてるは製品の機能的な価値だけでなく、「わくわくする楽しい商品」の提供を重視しています。
これは、製品を通じて顧客が豊かな「体験」や「感情」を得られることに焦点を当てた戦略です。
具体例を見て行きましょう!
筆タッチサインペン
参照:https://www.pentel.co.jp/products/pen/fudetouch_signpen/
単なるカラーペンとしてではなく、まるで筆で書いているかのような心地よいタッチ感を追求。これにより、書くこと自体が楽しくなるという使用体験を提供しています。
カスタマイズペン「i+(アイプラス)」
参照:https://www.pentel.co.jp/products/ballpointpen/iplus_body/
53種類のリフィルとデザインの異なるペン軸を自由に組み合わせることが可能。
顧客は自分だけの特別なペンを作り上げる「楽しさ」と「自己表現の喜び」を感じることができます。
また、ペントップに市販のイヤホンジャックアクセサリーを取り付けられる機能も追加され、より一層のパーソナライズを可能にしています。
このようなアプローチは、単にインクの色やペンの書き心地といった機能的価値だけでなく、製品を使うことで得られる心の動きや創造的な刺激といった感情的価値を重視していることを示しています。
ぺんてるは、製品を通して人々の「表現するよろこび」を育むという同社のビジョンを、香港市場における具体的な製品開発とマーケティング戦略に落とし込んでいるのです。
現地スタッフが主役!異業種とのコラボも
ぺんてるのグローバル戦略における重要な柱の一つが、現地社員の主体性を最大限に引き出すことです。
本社からの指示を待つのではなく、それぞれの地域の市場を最もよく知る現地スタッフに「自分たちの会社」という意識を持たせ、販促のアイデアから実行までを任せています。
これにより、その地域の具体的なニーズやトレンドに合致した、より効果的な提案が生まれています。
例えば、台湾支社が企画した「巨大な消しゴム」が香港市場でも大きな成功を収めたのは、このような現地主導のアプローチが機能した具体的な成果と言えるでしょう。
さらに、ぺんてるは従来の文具業界の枠を超えた異業種との積極的なコラボレーションを推進しています。
若い女性層へのアプローチとして、喫茶店を貸し切って食事会形式のプロモーションを実施したり、意外なところでは化粧品ブランドの「KATE」と共同でアイライナーを開発するなど、斬新な発想で製品の新たな価値を創造しています。
参照:https://www.pentel.co.jp/news/20220419/
また、漫画家を招いた絵画ワークショップの開催など、製品を通じた「体験」や「文化」を提案することで、幅広い層の顧客を巻き込むことに成功しています。
これらの取り組みは、単に製品を販売するだけでなく、顧客のライフスタイルに深く入り込み、ブランドへの愛着を育むための新しいマーケティング手法として、その有効性を示しています。
未来へ向けた、ぺんてるのグローバル戦略
ぺんてるは、変化の激しい現代において、これまでの成功に安住することなく、常に未来を見据えた戦略を打ち出しています。
筆記具の価値を再定義し、新しい市場を創る
デジタル化が急速に進む現代において、ぺんてるは筆記具が持つ本質的な価値を改めて見つめ直しています。
それは単なる記録の道具ではなく、「知性の活性化」につながるものと捉えているのです。
そして、2023年に発表した新しいメッセージ「Reimagine your world(もう一度、世界を描こう。)」を通じて、人々の想像力と創造力を刺激し、新たな市場のニーズを生み出そうとしています。
このタグラインには、「ありのままに、自らの世界を描くことが、明日の世界を創造していく」という想いが込められています。
これは、デジタル時代において、あえてアナログである筆記具の、ニッチでありながらも人間に深く根ざした本質的な価値を再発見し、それを世界に向けて再定義する戦略です。
ぺんてるは、この新たな価値提案によって、テクノロジーが進化しても失われない筆記具の存在意義を強調し、ブランドを長く持続させることを目指しています。
未来を見据えた4つの成長戦略
ぺんてるは、将来を見据えたいくつかの重要な成長戦略を進めています。
1.グローバルEC事業の強化
※EC=Eコマース
まず挙げられるのが、グローバルEC(電子商取引)事業の強化です。
2020年に新設されたグローバルEC事業本部は、日本国内だけでなく海外の販売会社とも協力し、ECでこそ売れる商品や仕組みづくりに注力しています。
これは、米国市場でECが台頭し、消費者の購買行動が変化していることに対応するための重要な戦略転換です。
ECは単なる販売チャネルではなく、顧客と直接つながり、膨大なデータを収集できる場でもあります。
このデータを活用することで、地域ごとのトレンドや製品ニーズをより精密に把握し、製品開発やマーケティング戦略にフィードバックすることが可能になります。
これにより、従来の物理的な市場調査を補完・強化し、デジタル時代における「現地化」をさらに深化させることを目指しています。
2.生産体制の最適化
生産体制の最適化と「ぺんてる品質」の維持にも引き続き力を入れています。
海外生産の拡大を進めており、例えば2011年度には海外生産比率が24%でしたが、2014年度には30%に拡大する計画でした。
リーマンショック後の工場稼働率の課題を乗り越え、海外5工場を含むグローバルな生産体制を最適化し、グループ全体の最適化を図っています。
ぺんてるは、世界中のどの生産拠点においても「ぺんてる品質」を維持できるよう、グローバルな生産体制の構築を目指しています。
これを実現するため、日本の工場や先に設立された海外の工場から、積極的に技術支援を行っています。
3.新しい事業や提携
ぺんてるは新しい事業領域への参入や、他社との戦略的な提携にも積極的に取り組んでいます。
例えば、2024年11月1日には墨汁メーカーの開明と資本業務提携を開始しました。
この提携は、両社の製品やノウハウを融合させ、開明社の墨汁をグローバルなアート領域のツールに昇華し、世界市場への展開を図ることを目的としています。
筆記具のコア技術であるインクや筆先のノウハウをアート分野へと拡張し、「表現するよろこび」や「知性の活性化」といったぺんてるのブランド価値をさらに強化する狙いがあります。
4.人材育成と意識改革
ぺんてるは、企業の持続的な成長を支える基盤として、人材育成と意識改革に力を入れています。
型にはまらない発想で新しい価値を生み出す人材が必要であると認識しており、「正解からはみ出そう」というキャッチフレーズを掲げています。
これは、指示を待つだけでなく、自ら問題を見つけ、解決策を創造できる人材を育成する哲学です。
社員それぞれがこだわりを持ち、それをメッセージ化し、行動に移していく風土を作り上げるために、意識改革を推進しています。
社員の海外駐在経験も豊富であり、グローバルな視点を持つ人材の育成にも注力しています。
異なる文化圏でのビジネス展開においては、多様な視点と柔軟な思考が求められるため、この人材育成哲学はぺんてるの持続的なグローバル競争力の源泉となるでしょう。
まとめ
ぺんてるのグローバル戦略は、創業以来の「世の中にないものを開発し、新たな需要と市場を創造する」という強い信念と、それを支える卓越した技術力に裏打ちされています。
同社が世界市場で確固たる地位を築き、海外売上比率が70%を超えるまでに成長した要因は多岐にわたります。
ぺんてるのグローバル戦略成功のポイント
スピーディーな海外進出:1953年という早い時期からの海外展開と、革新的な製品(例: ぺんてるサインペン)の投入 事業の多角化:文具に留まらず、精密技術を活かした電子機器や産業用ロボットなどへの事業拡大 「日本製」品質と現地適応の柔軟な両立:高い品質を維持しつつ、各国の文化や嗜好に合わせた製品開発やマーケティングを展開 香港市場での迅速なテスト戦略:流行の移り変わりが速い市場を、新製品のテストと改善サイクルを高速で回す場として活用 製品を超えた「楽しい体験」の提供:単なる機能だけでなく、書くことの楽しさや自己表現の喜びといった感情的価値を重視 現地スタッフの主体性重視と異業種とのコラボ:現地社員に裁量を与え、喫茶店や化粧品ブランドとの連携など、斬新なマーケティングを展開 |
しかし、ぺんてるは現状に満足せず、常に未来を見据えた戦略を打ち出しています。
未来を見据えた、ぺんてるのさらなる戦略
筆記具の価値の再定義と新しい市場の創造:デジタル化が進む中で筆記具の本質的な価値を「知性の活性化」と捉え、「Reimagine your world」というメッセージで新たなニーズを喚起 グローバルEC事業の強化:デジタル時代に対応したEC戦略の推進とデータ活用による現地化の深化 生産体制の最適化:世界中の生産拠点での「ぺんてる品質」維持と効率化 新しい事業や提携:墨汁メーカーの開明との資本業務提携など、新たな領域への挑戦 人材育成と意識改革:「正解からはみ出そう」という哲学に基づき、自律的に考え行動できる人材の育成 |
ぺんてるの事例は、海外事業の展開を検討している企業にとって、具体的な戦略のヒントや、変化の激しいグローバル市場で競争力を維持し、成長を続けるための実用的な教訓が詰まっていると言えるでしょう。
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この記事のライター
川上あおい
3児の母。川上サトシを支えつつ学んだことを活かし始めたハリネズミ。24時間、車を運転したことがある。

この記事の監修

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