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企業の戦略分析

スズキのブランディングから学ぼう!

スズキの100年を超える歴史と、その独自のブランディング戦略を徹底解説!軽自動車市場での成功から、インド市場での圧倒的シェア獲得、さらに「小・少・軽・短・美」の哲学、社内ブランディングまで、スズキの強さの秘密を深掘り。あなたの会社のブランド構築に活かせる3つのステップもご紹介します。

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特定の市場で揺るぎない地位を築き、多くの顧客から熱烈な支持を受ける企業は、一体どのようにブランドを構築しているのでしょうか?

その成功事例として、今回は「スズキ」のブランディング戦略について解説して行きます!

スズキは、1909年の創業以来、織機製造から二輪・四輪製造へと事業を多角化し、常に時代のニーズに応えながら進化を遂げてきました。

日本の軽自動車市場では、「小さなクルマ、大きな未来。」というスローガンを掲げ、「アルト」や「ジムニー」といった画期的な名車を生み出し、確固たるブランドイメージを築き上げています。

そして、スズキのグローバル戦略を語る上で欠かせないのが、インド市場における圧倒的な成功です。

人口が多く経済成長著しいインドの可能性にいち早く着目し、現地の文化やニーズに深く根差した戦略を展開することで、「国民車」としての地位を確立しました。

2022年度のデータを見ると、連結売上高の約39%、四輪販売台数の約55%をインド市場が占めるなど、その重要性は計り知れません。

この記事では、スズキが長年にわたり培ってきた「小・少・軽・短・美」という独自のブランド哲学軽自動車とインド市場における徹底した市場特化戦略、そして「ファンネット宣言」に代表される社内ブランディングに至るまで、多岐にわたるスズキのブランディング戦略を詳細に分析していきます。

これらの事例から、あなたの会社がブランド価値を高め、市場での競争優位性を確立するための具体的なヒントやフレームワークをぜひ見つけてみてください!

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スズキの歴史

スズキの歩みは、1909年に鈴木道雄が創業した鈴木式織機製作所に始まります。当初は織物機械の製造を手がけていましたが、その技術力を活かして多角化を模索し、1950年代初頭に二輪車分野へ進出しました。

1952年には、自転車補助エンジン「パワーフリー号」を発売し、これがスズキの輸送機器メーカーとしての第一歩となります。

1954年には鈴木自動車工業株式会社へと社名を変更し、翌1955年には本格的な軽四輪車「スズライト」を発表します。

スズライトは、当時の日本の国情に合った実用性と経済性を兼ね備え、マイカー時代の先駆けとなる画期的な製品でした。

この成功を足掛かりに、スズキは軽自動車の分野で確固たる地位を築き上げ、「小さなクルマ、大きな未来。」というスローガンに象徴される独自のブランドイメージを形成していきます。

スズキの代表的名車「アルト」と「ジムニー」の誕生

代表的な名車としては、軽自動車の概念を覆した「アルト」(1979年発売)が挙げられます。徹底したコスト削減と、当時としては画期的な47万円という低価格で市場に衝撃を与え、女性を中心とした新たな顧客層を開拓しました。

また、本格的なオフロード性能を持つ軽四輪駆動車「ジムニー」(1970年発売)は、その高い走破性と耐久性から、プロの道具としてだけでなく、レジャー用途としても長く愛され続け、スズキの技術力と独創性を象徴する一台となっています。

二輪車では、スタイリッシュなデザインと高性能で人気を博した「GSX1100Sカタナ」(1981年発売)などが知られています。

これらの名車は、スズキの「ユーザーの立場に立ったものづくり」という理念を体現し、ブランドの信頼性を高める上で大きな役割を果たしました。

インド市場への挑戦と成長の軌跡

スズキが海外市場、特にインドに目をつけ、市場展開していった歴史は、同社のグローバル戦略において極めて重要な転換点となりました。

1980年代初頭、スズキは成長著しいインド市場の可能性にいち早く着目し、1982年にはインド政府傘下の企業と合弁会社「マルチ・スズキ・インディア」を設立します。

当時のインドは、国内生産能力が限られ、国民のモータリゼーションはまだ始まったばかりという状況でした。

スズキは、日本の軽自動車で培った「小さく、安く、使いやすい」という強みを活かし、インド国民の所得水準や道路事情に合った小型車の開発・生産に乗り出します。

そして1983年、インド市場に適合させた最初のモデル「マルチ・800」を投入。

これは、小型で経済性に優れ、インドの家族構成や交通状況に適した国民車として爆発的な人気を博しました。

その後も、現地ニーズに合わせた多様な車種を開発・投入し続け、販売網やサービス体制の整備にも注力することで、インド市場での確固たる地位を築き上げていきました。

その結果、2022年度のデータを見ると、スズキの連結売上高4兆6,416億円のうち、インドでの売上高は1兆7,882億円を占め、日本での売上高1兆2,120億円を上回り、全体の約39%を占めるまでに成長しています。

引用:スズキの公開スライドより

加えて、四輪販売台数を見ても、全世界で約300万台を達成したうち、インドでの販売台数は164万5千台と、全体の約55%を占めています。

これらの数値から、インドがスズキにとって「最も重要な市場」であることが明確に見て取れます。

初期の戦略的な判断継続的な投資が、現在のグローバルな成長を支える大きな柱となっていることが理解できるでしょう。

このほかにも、自動車学校の運営を通じて購入前から顧客を獲得する戦略や、広範な流通チャネルの構築といった多角的なアプローチもインドでの成功要因の一つとなっています。

スズキの歴史を肌で感じることができる「スズキ歴史館」

参照:https://suzuki-rekishikan.jp/

静岡県浜松市にある「スズキ歴史館」では、こうしたスズキの100年以上にわたる歴史や、創業以来受け継がれてきた「ものづくり」への情熱に触れることができます。

館内には、初期の織機から歴代の二輪車、四輪車、さらには船外機に至るまで、数多くの製品が展示されており、スズキがどのように時代とともに進化し、社会のニーズに応えてきたかを具体的に知ることができます。

また、クルマづくりの工程開発にかける想いなども紹介されており、スズキブランドの根底にある理念や技術力への理解を深めることができるでしょう。

これらの情報は、自社のブランディングを考える上で、特定のターゲット層に響く製品開発や、ブランドストーリーの構築といった観点から、多くのヒントを与えてくれるはずです。

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スズキのブランディング戦略

スズキのブランディング戦略は、同社が長年にわたり培ってきた独自の哲学と、市場の特性を深く理解した集中戦略によって構築されています。

これにより、「軽自動車といえばスズキ」という強固なブランドイメージを確立し、さらにはインド市場における圧倒的なシェア獲得にも成功しているのです。

詳しく見ていきましょう!

スズキのブランド哲学「小・少・軽・短・美」

参照:https://www.suzuki.co.jp/corporate/csr_environment/intro/philosophy.html

スズキのブランド哲学である「小・少・軽・短・美」は、同社のものづくりの根幹をなす理念であり、製品開発から企業メッセージ、さらには日々の業務プロセスに至るまで、その一貫性が見られます。

この哲学は、もともと生産現場における無駄を省き、効率的で高品質なものづくりを目指す基本方針として始まりました。

現在ではその適用範囲は広がり、あらゆる部門のあらゆる場面で目指すべき行動理念として浸透しています。

「小さく」「少なく」「軽く」「短く」「美しく」という五つの要素は、それぞれが効率性資源の最適配分スリム化迅速な意思決定と実行、そして顧客満足を追求するという意味を持っています。

例えば、コンパクトな車体設計は「小」「軽」に繋がり、燃費性能の向上取り回しの良さとして顧客に価値を提供しています。

また、開発プロセスにおいても無駄を省き、意思決定を迅速に行うことで、市場の変化に素早く対応し、タイムリーに製品を投入することを可能にしています。

このように、「小・少・軽・短・美」は単なるスローガンではなく、スズキの製品やサービス、そして企業文化そのものに深く根付いた、揺るぎないブランドの基盤となっているのです。

スズキの市場特化の事例

スズキは、特定の市場に特化し、そこに深く根差したブランディング戦略を展開することで、強固なブランドポジションを築き上げてきました。

特に顕著なのが、日本の軽自動車市場インド市場における成功です。

日本の軽自動車市場での事例

参照:https://www.suzuki.co.jp/car/hustler/

軽自動車市場においては、主婦層や若年層といった特定のターゲットに焦点を当て、彼らのライフスタイルやニーズに寄り添った製品開発コミュニケーションを徹底しています。

例えば、「スペーシア」は広い室内空間と使い勝手の良さで主婦層からの支持を集め、「ハスラー」はスタイリッシュなデザインと遊び心あふれるコンセプトで若年層に人気を博しました。

参照:https://www.suzuki.co.jp/car/spacia/

これらの車種は、単に移動手段としてだけでなく、生活を彩るパートナーとしての「親しみやすさ」を重視したプロモーションが特徴です。

CMや広告では国民的人気キャラクターの起用や、地域密着型のイベントを積極的に実施することで、幅広い世代にブランドイメージを浸透させています。

販売店網の充実も、顧客との距離を縮め、高い顧客満足度につながる要因となっています。

インド市場での事例

前述の通り、スズキの事業の要となっているインド市場。2022年の公式データによるとその市場シェアは40%を超え「国民車」としての地位を確立しています。

引用:スズキの公開スライドより

家族文化を重んじるインドの消費者に寄り添う価値提案が、長期的な顧客ロイヤルティの構築に繋がっています。

社内ブランディング「ファンネット宣言」

スズキのブランディングは、顧客に向けた外部戦略だけでなく、社員の意識改革を促す社内ブランディングにも注力しています。

その一環として「ファンネット宣言」という考え方があり、特に「拠点長勉強会」がその実践において重要な役割を担っています。

この勉強会は、お客様相談室に寄せられる苦情を単なるクレームとして捉えるのではなく、「ここにこそニーズがあるのだ」という視点に転換することを促しました。

過去には現場が苦情解決に後ろ向きな姿勢を見せることもあった中、同社副社長のリーダーシップのもと、苦情を解決することで顧客が再びスズキを指名してくれるという考え方が徹底されました。

これは、顧客との接点である現場の従業員一人ひとりがブランドの体現者であるという認識を高め、顧客からの信頼を得るための行動を促すものです。

これにより、顧客満足度の向上だけでなく、社員自身の仕事への喜びやモチベーション向上にもつながり、結果として2014年にはスズキが8年ぶりに軽四輪車販売台数年間トップに返り咲くなど、具体的な成果にも結びついています。

社内からブランドの価値を高め、顧客との長期的な関係性を築くための土台を構築していると言えるでしょう。

まだまだある!スズキの魅力的な施策

スズキのブランド構築への取り組みは、主力事業である自動車や二輪車の開発・販売、そして先に触れた独自の経営哲学や市場特化戦略、社内ブランディングに留まりません。

ここでは、さらに多角的な視点から、スズキが展開するユニークで魅力的な施策のいくつかを紹介します。

これらの活動は、直接的な販売促進だけでなく、将来の顧客育成新たな市場の開拓、そしてファンとのより深い絆づくりに貢献しており、企業ブランドの価値を長期的に高めるための戦略的な意図がうかがえます。

未来のファンを育む「スズキこども質問箱」「スズキこども探検隊」

スズキは、次代を担う子どもたちに向けた取り組みにも力を入れています。

その代表例が、ウェブサイト上で展開される「スズキこども質問箱」や、工場見学などを通じてものづくりを体験できる「スズキこども探検隊」といったプログラムです。

これらの活動は、子どもたちに自動車産業や科学技術への興味・関心を抱いてもらうことを目的としており、同時にスズキという企業やその製品に対する親しみを育む機会となっています。

「スズキこども質問箱」では、クルマの仕組みや交通安全に関する素朴な疑問に対して、専門のスタッフが分かりやすく丁寧に回答しています。

参照:https://www.suzuki.co.jp/corporate/kids/

子どもたちの知的好奇心を満たすだけでなく、企業の誠実な姿勢を伝える場とも言えるでしょう。

一方「スズキこども探検隊」のような体験型プログラムは、実際に生産現場に触れることで、ものづくりの面白さや大切さを肌で感じてもらう貴重な機会を提供します。

参照:https://www.suzuki.co.jp/corporate/tankentai/

これらの活動は、短期的な販売成果に直結するものではありませんが、長期的な視点で見れば、将来の顧客となる子どもたちやその保護者に対して、スズキブランドへのポジティブなイメージを醸成する効果が期待できます。

また、地域社会への貢献というCSR(企業の社会的責任)の側面も持ち合わせており、企業全体のブランド価値向上にも寄与すると考えられます。

移動販売事業者向けサービスアプリ「Shuppa」

参照:https://shuppa.info/

スズキは、新たな市場のニーズに応えるサービス開発にも積極的に取り組んでいます。

その一つが、移動販売車を使ったビジネスをサポートするスマートフォン向けアプリ「Shuppa(シュッパ)」です。

このアプリは、移動販売事業者が日々の営業活動をより効率的かつ効果的に行うための様々な機能を提供しており、スズキの軽トラックや軽バンを利用する個人事業主や小規模事業者主なターゲットとしています。

「Shuppa」には、出店場所の事前告知や顧客への通知機能、販売ルートの管理、売上記録といった、移動販売ビジネスに特化した機能が搭載されています。

これにより、事業者は集客力の向上や業務の効率化を図ることができ、ビジネスの安定化や成長に繋げることが期待されます。

スズキにとっては、単に車両を販売するだけでなく、購入後のビジネス運営までをサポートすることで、顧客との長期的な関係性を構築し、ブランドへの信頼感を高める狙いがあると考えられます。

この取り組みは、ニッチな市場ではあるものの、そこで奮闘する事業者の課題解決に直接的に貢献することで、スズキブランドの価値を高める事例と言えるでしょう。

特定の顧客セグメント(※セグメントとは、顧客や市場をある共通の特性で細かく分けたグループのこと)に対して、単なる製品提供に留まらず、その先の活用シーンまで見据えたソリューションを提供することは、顧客ロイヤルティの向上に繋がり、結果として「〇〇といえば自社」という想起を獲得するための有効な手段となり得ます。

自社の製品が、どのような顧客のどのような課題解決に貢献できるのかを深掘りし、付加価値の高いサービスを組み合わせるという発想は、多くの企業にとってヒントになるはずです。

ファンの心を鷲掴み!ECサイト「S-MALL」

参照:https://s-mall.jp/

スズキは、既存顧客やスズキファンとのエンゲージメントを深めるための施策として、公式オンラインストア「S-MALL(エスモール)」を運営しています。

このECサイトは、単にスズキ関連グッズを販売するだけでなく、ブランドの世界観を伝え、ファンとのコミュニケーションを促進するプラットフォームとしての役割も担っています。

特に注目すべきは、販売されているアイテムの独自性と、製品への愛着を深めるための工夫です。

「S-MALL」では、アパレルや雑貨、アウトドアグッズなど、幅広いオリジナル商品が展開されていますが、その中でも特徴的なのが、ジムニーやハスラー、カタナといった人気の車種ごとに専用のアイテムがラインナップされている点です。

参照:https://s-mall.jp/pages/item?s-mall_headermenu

これにより、各モデルのファンは、自身の愛車に関連したグッズを身につけたり使用することで、製品への愛着をさらに深め、スズキブランドとの繋がりをより強く感じることができます。

参照:https://s-mall.jp/pages/jimny_lp-s-mall_category

単なる移動手段としてではなく、ライフスタイルの一部として製品を捉え、その世界観を共有するような商品展開は、顧客の心を掴む上で非常に効果的です。

またサイト内では、製品開発の裏話やスズキの歴史、イベント情報などを紹介するブログ記事も掲載されており、読み物コンテンツとしても充実しています。

このように、製品の背景にあるストーリーや作り手の想いを伝えることで、ブランドへの理解と共感を促しているのです。

ECサイトを単なる販売チャネルとしてだけでなく、ブランド発信の場ファンとの交流の場として活用する戦略は、顧客のLTV(顧客生涯価値)向上にも繋がる重要な取り組みであり、自社技術や製品の魅力をエンドユーザー(※エンドユーザーとは、製品やサービスを最終的に利用する人のこと)や潜在顧客に伝える際にも応用できる考え方でしょう。

多くのトップアスリートを輩出!「スズキアスリートクラブ」

参照:https://www.suzuki-athleteclub.jp/

スズキは、企業スポーツの振興にも長年にわたり積極的に取り組んでおり、「スズキアスリートクラブ」を運営しています。

このクラブは、陸上競技を中心に、国内外の大会で活躍する多くのトップアスリートを育成・輩出してきました。

企業がスポーツチームを支援することは、直接的な製品販売とは異なるものの、ブランドイメージの向上社会貢献という側面で重要な役割を果たします。

スズキアスリートクラブの選手たちは、オリンピックや世界選手権といった大舞台で活躍することで、スズキの社名やロゴを世界に発信し、企業ブランドの認知度向上に貢献しています。

また、アスリートが持つ「挑戦」「努力」「フェアプレー」といったポジティブなイメージは、そのまま企業イメージにも繋がり、ブランドに対する好感度や信頼感を高める効果が期待できます。

特に、地域に根差した活動や、ジュニア世代の育成にも力を入れている点は、地域社会への貢献意識の表れであり、企業市民としてのスズキの姿勢を示すものです。

こうしたスポーツ支援活動は、社員の士気高揚や一体感の醸成、さらには優秀な人材の獲得といった社内的な効果ももたらすと考えられます。

自社の名前を背負って活躍するアスリートの姿は、社員にとって誇りとなり、企業へのエンゲージメントを高める一因となるでしょう。

間接的ではありますが、スポーツを通じた感動や共感の提供は、人々の心に深く刻まれ、長期的にブランドへの親近感やロイヤルティを育む上で、非常に有効なコミュニケーション戦略の一つと言えます。

これは、直接的な製品プロモーションとは異なる角度からブランド価値を高めるアプローチとして、検討に値する施策です。

スズキ流!ブランディング構築の3ステップ

これまでに見てきたスズキの多岐にわたるブランディング活動は、一朝一夕に完成したものではなく、市場や顧客と真摯に向き合い、試行錯誤を繰り返しながら築き上げられてきたものです。

その背景には、企業規模の大小にかかわらず、多くの組織が参考にできる普遍的なブランド構築の進め方が見て取れます。

ここでは、スズキの成功事例から学び取れる、独自の強みを活かしたブランドを構築するための3つのステップを具体的に解説します。

これらのステップは、限られたリソースの中で効果的なブランディングを目指す企業にとって、実践的な指針となるでしょう。

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ステップ① 強みと熱狂的ファンの再発見

ブランド構築の第一歩は、自社が何者であり、誰にとってかけがえのない存在なのかを深く理解することから始まります。

そのためにはまず、既存顧客の声に真摯に耳を傾けることが不可欠です。

アンケート調査個別のインタビューを通じて、顧客が自社の製品やサービスを選んでくれている理由、どのような点に価値を感じているのか、あるいは不満や改善を望む点は何かといった「生の声」を丁寧に集めましょう。

特に、自社を熱心に支持してくれる「熱狂的なファン」とも言える顧客層の声は、自社の本質的な強みや、まだ気づいていない魅力を発見するための貴重な宝庫となります。

次に、社内に目を向け、部門横断的なワークショップなどを開催して、自社の「隠れた価値」「組織文化としての強み」を掘り起こすことも重要です。

営業、開発、製造、マーケティングなど、異なる視点を持つ社員が集まり、自社の歴史や製品への想い、顧客とのエピソードなどを共有する中で、これまで当たり前だと思っていたことの中に、実は他社にはない独自の価値が見つかることがあります

スズキが「小・少・軽・短・美」という哲学を長年貫いているように、自社ならではの価値基準やこだわりを再認識することが、ブランドの核を形成する上で欠かせません。

これらの情報を基に、自社が最も価値を提供できる理想の顧客像、すなわち「ペルソナ」を具体的に描き出します

年齢、性別、職業、ライフスタイル、価値観、抱えている課題などを詳細に設定することで、その後のブランドメッセージや施策の精度が格段に向上し、より深く顧客に共感されるブランド構築へと繋がっていきます。

ステップ② 「一点突破」の仮説を立てる

自社の強みと、その強みを最も評価してくれる熱狂的なファンの姿が見えてきたら、次はその特定の顧客セグメントに対して、どのような独自の価値を提供していくのか、その「一点突破」の仮説を立てる段階です。

特にリソースが限られる企業にとっては、全ての市場、全ての顧客を満足させようとするのではなく、自社が最も輝ける領域、いわば「小さなNo.1」を目指せるニッチな市場や顧客層にターゲットを絞り込み、そこに経営資源を集中投下する戦略が有効となります。

これは、スズキが軽自動車市場やインド市場で独自のポジションを築き上げた戦略とも通じる考え方です。

この「一点突破」の仮説を立てる上で重要なのは、自社の強みを顧客にとっての明確な便益へと転換し、それを他社との違いが際立つ「差別化ポイント」として言語化することです。

なぜ顧客は競合ではなく自社を選ぶべきなのか、その理由を簡潔かつ魅力的に伝えられるメッセージを開発する必要があります。

そのためには、改めて「自社の揺るがない強み(Strength)」「ターゲット顧客が本当に求めているニーズ(Customer Needs)」、そして「競合他社が満たせていない、あるいは苦手としている領域(Competitor’s Weakness)」の3つの要素を冷静に分析し、これらの要素が重なり合う、まさに自社だけが提供できる独自の価値領域、すなわち「勝てるポジション」を見つけ出すことが求められます。

この段階で立てる仮説は、あくまで「仮の説」であり、完璧である必要はありません。

しかし、この仮説がその後の具体的なアクションの方向性を定める羅針盤となるため、チーム内で十分に議論を重ね、納得感のあるものに仕上げることが重要です。

ステップ③ アジャイルに検証・改善

強固なブランドは、緻密な計画だけで生まれるものではなく、市場や顧客からのフィードバックを元に、柔軟に検証と改善を繰り返すプロセスを経て磨き上げられていきます。

ステップ②で立てた「一点突破」の仮説に基づき、まずは小さく、低コストで具体的な施策を開始し、その反応を見ながらアジャイルに改善を重ねていくアプローチが有効です。

(※アジャイルとは、計画に固執するのではなく、短い期間で「計画→設計→実行→テスト」といった開発サイクルを何度も繰り返し、状況の変化や新たな発見に柔軟かつ迅速に対応しながら、継続的に改善を進めていく考え方や手法のこと。)

これは、完成を待ってから一気に展開するのではなく、まず試作品を市場に出し、顧客の声を聞きながら改良を重ねていく製造業の考え方にも似ています。

具体的な検証手段としては、以下の項目が挙げられます。

・SNSでの情報発信

・ターゲット広告の実施

・自社ブログやオウンドメディアでのコンテンツマーケティング

・特定の顧客層に向けたメールマガジンの配信

これらの手法は、比較的低コストで始めることができ、かつ効果測定もしやすいため、仮説の有効性を検証するには最適です。

例えば、いくつかの異なるブランドメッセージやキャッチコピーを用意し、どちらがよりターゲット顧客の反応が良いかをテスト(A/Bテストなど)することも可能です。

重要なのは、一度施策を実行して終わりにするのではなく、「テスト(実行)→学び(効果測定・分析)→改良(次の施策への反映)」というサイクルを粘り強く回し続けることです。

顧客からのコメントや問い合わせ、ウェブサイトのアクセスデータ、製品やサービスへの反響などを注意深く観察し、何が受け入れられ、何が響かなかったのかを分析します。

そして、その学びを次のアクションプランに活かしていく。

この地道な繰り返しのプロセスこそが、ブランドメッセージの精度を高め、ターゲット顧客との絆を深め、最終的には「〇〇といえば自社」と想起されるような、熱狂的なファンに支えられる強いブランドを育んでいくのです。

まとめ

本記事では、スズキの100年以上にわたる歴史と、その中で培われてきた独自のブランディング戦略を掘り下げました。

スズキの歩みとブランド形成は以下の通りです。

・1909年の鈴木式織機製作所創業から始まり、1950年代に二輪車へ進出

・1955年の軽四輪車「スズライト」発売を機に、軽自動車分野で確固たる地位を確立。「小さなクルマ、大きな未来。」というブランドイメージを形成。

・代表的な名車には、コストパフォーマンスに優れた「アルト」(1979年発売)や、本格オフロード性能を持つ「ジムニー」(1970年発売)、高性能な二輪車「GSX1100Sカタナ」(1981年発売)などがあります。

グローバル戦略において、スズキはインド市場への早期着目に成功しました。

・1980年代初頭にインド市場の可能性を見出し、1982年に合弁会社「マルチ・スズキ・インディア」を設立。

・1983年にインド市場適合車「マルチ・800」を投入し、国民車として爆発的な人気を獲得しました。

・2022年度のデータでは、連結売上高でインドが日本を上回り全体の約39%を占め、四輪販売台数ではインドが約55%を占めるなど、インドがスズキにとって「最も重要な市場」であることを明確に示しています。

・この成功は、現地ニーズに合わせた製品開発、自動車学校運営、広範な流通チャネル構築といった多角的なアプローチによるものです。

スズキのブランディングを支える哲学と戦略は以下の点が挙げられます。

ブランド哲学「小・少・軽・短・美」:製品開発から企業メッセージ、日々の業務に至るまで一貫して貫かれる行動理念であり、効率性、資源の最適配分、迅速な意思決定、顧客満足を追求しています。

市場特化戦略:日本の軽自動車市場では主婦層・若年層に焦点を当てた「スペーシア」や「ハスラー」を展開し、「親しみやすさ」を重視したプロモーションを実施。インド市場では徹底したローカライゼーションで「国民車」としての地位を確立しました。

社内ブランディング「ファンネット宣言」:「拠点長勉強会」を通じて、顧客の苦情をニーズとして捉え、解決することで顧客からの信頼を得るという意識を社内に浸透させています。

さらに、スズキは多角的な施策でブランド価値を高めています。

未来のファン育成:「スズキこども質問箱」や「スズキこども探検隊」を通じて、子どもたちの知的好奇心を育み、ブランドへの親しみを醸成。

新たな市場開拓:移動販売事業者向けアプリ「Shuppa」で、軽トラックや軽バン利用者のビジネスをサポートし、顧客との長期的な関係性を構築。

ファンエンゲージメント強化:公式オンラインストア「S-MALL」で車種ごとのオリジナルグッズを展開し、ブランドの世界観を発信。

企業イメージ向上:「スズキアスリートクラブ」の運営を通じて、企業イメージと社会貢献、社員エンゲージメントを高めています。

これらのスズキのブランディング戦略から、企業規模にかかわらず普遍的に学べる3つのステップがあります。

1.強みと熱狂的ファンの再発見:自社の本質的な強みと、それを熱心に支持する顧客層を深く理解する。

2.「一点突破」の仮説を立てる:自社が最も輝けるニッチな市場や顧客層に焦点を絞り、独自の価値提供の仮説を立てる。

3.アジャイルに検証・改善:小さく始め、市場や顧客からのフィードバックに基づき、柔軟かつ迅速に施策を検証し、改善を繰り返す。

スズキの成功事例は、顧客や市場と真摯に向き合い独自の強みを活かした戦略を一貫して実行することの重要性を示しています。

これらの学びは、貴社のブランディング戦略を構築・強化する上で、具体的なヒントとなるでしょう。

※記載のない画像は参照:https://www.suzuki.co.jp/100th/history.html

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この記事のライター

川上あおい

3児の母。川上サトシを支えつつ学んだことを活かし始めたハリネズミ。24時間、車を運転したことがある。

この記事の監修

川上サトシ

合同会社ぎあはーと 代表

Webマーケター。
ヴァイオリニストとして活動していた20代の頃、Webマーケティングの重要性を痛感。骨董品のEC管理や食べログの営業を経て、Webコンサル会社のマーケティング担当となる。引っ越し企業のサイトをSEO施策により【半年で1万PVから20万PVまで成長させる】、上場アパレル企業の【売上を1年で3倍にする】など数多くの実績を残して会社設立。専門はSEOと広告運用。
ルリニコクのヴァイオリニストとしても活動中。

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