一蘭は、単なる豚骨ラーメン店として一線を画し、独自の戦略で顧客体験を極限まで追求している企業です。
「味集中カウンター」や「オーダー用紙」、「替え玉プレート」に代表される独特の食事体験を提供し、数多くのファンを作り出していることが最大の特徴。
筆者も2週に1度は食べにいくほどハマっています!笑
そんな大好きな一蘭について、マーケティングという視点から紐解いてみたところ、様々な企業にとって参考になりそうな戦略ポイントが満載であることがわかりました。
今回はそんな一蘭のマーケティング戦略について、徹底解説させていただきます!
ページコンテンツ
一蘭とは?
一蘭の「天然とんこつラーメン」。とにかく美味しいので未経験の方はぜひ。筆者撮影。
一蘭は福岡発祥のユニークな豚骨ラーメン専門チェーン。
単品特化のメニューである「天然とんこつラーメン」の味を最大の武器としつつ、味集中カウンターとオーダー用紙で「自分好み」を追求してもらいつつも、接客コストを抑えて回転率を高める独自モデルが強みです。
製造から販売まで一貫管理し、安定品質でリピーターを確保。国内外100店規模へ拡大し、日本式体験を武器に数多くのファンを生み出しています。
一蘭の歴史
一蘭の歴史は、1960年に福岡県福岡市で創業された「双葉ラーメン」にルーツを持ちます。
当初は一般的な屋台のラーメン店として地元に愛されていましたが、1966年に現在の「一蘭」の前身である「のれん分け」の形で「一蘭」という店名が誕生しました。
この時期から、後の「味集中カウンター」や「オーダー用紙」の原型となるアイデアが芽生え始めたと言われています。
特に、創業者の「お客様がラーメンの味に最大限集中できる環境を提供したい」という強い想いが、後の独自システム開発へと繋がっていきます。
1993年には、現在の株式会社一蘭が設立され、福岡市に「那の川店」をオープンしました。
この店舗で現在の「味集中カウンター」や「オーダー用紙システム」が本格的に導入され、一蘭独自のスタイルが確立されました。
この革新的なシステムは、当時のラーメン業界では異例であり、顧客からは「一人でラーメンを食べるのに最適」「味に集中できる」と高く評価され、瞬く間に人気を集めました。
一蘭の特徴
一蘭には多くの独特な特徴やシステムがありますが、そのうち代表的なものは以下のとおりです。
・味集中カウンター ・オーダー用紙 ・替玉プレート ・単品特化のメニュー ・全店舗統一の味 ・女性客、一人客が入りやすい ・外国人観光客に人気 ・離職率6%の人材マネジメント |
また一蘭はただユニークなだけではなく、コロナ禍でも黒字だったり、売上高経常利益率が15%だったり(飲食業界では1位)と、経営における結果も非常に好調です。
参考:https://ichiran.com/news/2018/05/mj.html
一蘭のターゲット戦略
それでは早速、一蘭のマーケティング戦略についてひとつずつ紐解いていきましょう。
ここではそのひとつとして、ターゲット戦略について解説します。
女性客や一人客をターゲットに
従来、ラーメン店が狙うべき客層は男性中心と言われてきました。
しかし一蘭は女性や一人客を強く意識した戦略で大成功しています。
事実、一蘭では女性客比率が高く、一般的なラーメン店の15%程度を大きく上回るそうです。(一説によれば40%ほどだとか)
これは「一人でも入りやすく、人目を気にせず食事できる環境」を整えたことによるものです。
例えば、女性客へのアンケートで「一人でラーメン店に入りづらい」「替え玉を注文する姿を見られたくない」といった声を拾い、後述する「味集中カウンター」などの独自システムで対応しました。
これにより女性客や一人客でも安心して来店できるブランドイメージを確立しています。
近年はインバウンド客もターゲットに
さらに近年では、外国人観光客も主要なターゲット層となっています。
2014年頃からSNSでの口コミ拡散とインバウンド需要の高まりにより、一蘭は海外から「日本に来たら必ず食べたいラーメン」として認知が広がりました。
多言語対応の注文用紙や券売機、言語別の案内などを整備し、外国人でも言葉の心配なく利用できる環境を用意したことも功を奏しています。
参考:https://yamatogokoro.jp/report/20935/
一蘭のブランディング戦略
一蘭のオーダー用紙。そして右上の呼び出し台に替玉プレートを置く仕組み。筆者撮影。
一蘭のブランディングは、「唯一無二の体験」と「徹底した統一感」によって支えられています。
味集中カウンター
最大の特徴である「味集中カウンター」はその象徴です。
カウンター席は両側が仕切られ、正面もすだれで厨房と遮られており、隣客やスタッフの姿が見えません。
この特許取得済みの仕組みは、他人の視線を気にせずラーメンの味に没頭できる環境を生み出しています。
もともとは「麺をすする姿を見られるのが恥ずかしい」「一人で入りにくい」という女性の声に応えるため考案され、1993年のチェーン展開当初から導入されました。
店内に貼り出されたブランドストーリー
カウンターには一蘭の歴史やこだわりが書かれたパネルが設置されており、待ち時間や食事中に自然とブランドストーリーを読んでもらえる仕掛けにもなっています。
これにより「情報を知る」体験が提供され、顧客の記憶にブランドの印象を焼き付けています。
スタッフの姿を見せない演出
スタッフの姿を極力見せない演出もブランディングの一環です。
注文は専用のオーダー用紙に記入し、カウンター越しの小窓からラーメンが提供されます。
接客上の会話や演出を敢えて抑えることで、「誰が作ったか」ではなく純粋に商品(ラーメン)の魅力に集中してもらう狙いがあります。
伝統的なこだわりを感じさせるロゴデザイン
デザイン面でも統一感のあるブランドイメージを構築しています。
緑地に赤い筆文字ロゴの看板、店舗外観・内装の意匠、さらには商品パッケージに至るまで、一蘭は伝統的な博多らーめん文化を感じさせつつ全国どの店舗でも同じ印象を受けるデザインで統一されています。
「赤い秘伝のたれ」を象徴する赤、天然とんこつの自然さを思わせる緑と木目調のインテリアが調和し、視覚的にも一目で一蘭と分かる世界観を演出しています。
独自の名称や仕組みを商標登録
また、一蘭は店名やロゴのみならず、「味集中カウンター」「替玉プレート」など独自の名称・仕組みに関する知的財産も数多く商標登録し保護しています。
これは模倣店の出現を防ぎつつ、唯一無二のブランド体験を守るための戦略といえます。
結果として、一蘭の名前を聞けば多くの人が「仕切りのあるカウンターでとんこつラーメンを食べる特別な店」を連想するまでにブランドイメージが確立されました。
この強力なイメージは、人々の記憶に粘着するように残り、無料でテレビCMを流し続けているのと同等の効果を生んでいると吉冨社長も語っています。
一蘭の商品戦略
単品特化の戦略
メニュー構成において一蘭は、業界では異例とも言える「単品特化」戦略を貫いています。
看板商品の「天然とんこつラーメン」一種類に絞り込み、餃子や炒飯といったサイドメニューも用意していません。
多くの「とんこつラーメン専門店」が実際には醤油味や他メニューを併売する中で、一蘭は徹底して豚骨ラーメン一本勝負を続けています。
この究極の集中によってスープや麺の品質を深く追求でき、「豚骨ラーメンといえば一蘭」という揺るぎない地位を築きました。
でもライスはちゃんとある。筆者撮影。
味の統一性
味の統一性も一蘭の商品戦略の重要な要素です。
世界中どの店舗でも同じ味を提供するため、核心となる「赤い秘伝のたれ」や豚骨スープの出汁は福岡県糸島市の「一蘭の森」にある自社工場で一括製造し各店へ直送しています。
一蘭の森は原材料の選定から仕込みまで管理する一蘭最大の生産拠点で、各店舗はこの中央工場から供給されるスープ・たれを用いることで味のブレを防いでいます。
なお麺の硬さやタレの量など細かな好みに応えるオーダー用紙方式を導入したのは、元々は常連客一人ひとりの好みを把握していた創業当初の会員制営業を、一般客にも対応できるようシステム化したものです。
現在では「味の濃さ・こってり度・にんにくの量・青ねぎ・チャーシュー有無・秘伝のたれの量・麺の固さ」の7項目について好みを指定でき、どんな嗜好にも合わせられる柔軟さがあります。
こうして一杯ごとのカスタマイズを可能にしながらも、ベースのスープやたれで一蘭らしい味わいを統一していることが、国内外のファンに安心感を与えています。
やや高めの価格設定
価格設定においては、他のラーメンチェーンよりもやや高めの戦略価格を採っています。
一杯あたりの価格は近年ついに1,000円近くなり話題となりましたが、それでも需要が衰えないのは「価格以上の価値」を提供されているという顧客の納得感によるものです。
「味集中カウンター」による唯一無二の体験、安定した高品質の味、細やかな好みへの対応といった付加価値が、高価格でも選ばれるブランド力を生んでいます。
実際、一蘭のファンは値上げ後も離れず来店を続けており、2024年度の売上高は432.8億円と2015年度の146億円から大幅に伸長しています。
通販やカップ麺の展開
その一方で、持ち帰り需要への対応として通販限定商品やカップ麺の販売にも乗り出しています。
2021年に発売した初の公式カップ麺「一蘭 とんこつ」は予想を大幅に上回る売れ行きで品薄になるほど人気を博しました。
こうした商品展開はコロナ禍で店舗に来られない顧客層にも一蘭の味を届け、新たな収益源ともなりました。
一蘭のプロモーション戦略
一蘭はその独特な体験価値ゆえ、広告宣伝においても口コミや話題性を大きく活用する戦略を採ってきました。
店舗体験そのものが広告
創業以来テレビCMなど大量出稿型の宣伝は目立ちませんが、店舗体験そのものが「話題になる仕掛け」となっています。
実際、一蘭が外国人観光客に爆発的に知られるようになったのも、FacebookやInstagram、微信(WeChat)といったSNS上で「行ってみたい!」という投稿が拡散されたことがきっかけでした。
海外の旅行者たちが味集中カウンターやオーダー用紙、替玉注文時のチャルメラ音といったユニークなシステムに驚き、その体験を写真や動画付きでSNSに投稿した結果、海外でも一蘭の知名度が急上昇したのです。
一蘭側も多言語対応や内装のエンタメ性を高めることで、この自発的なSNS拡散を後押ししています。
SNSアカウントも運用
さらに現在では一蘭自身も公式SNSアカウントを各種開設し情報発信を行っています。
FacebookやX(旧Twitter)、Instagram、TikTokの公式アカウントでは、新店舗オープンや季節限定商品の案内、キャンペーン情報などを発信し、フォロワーとのエンゲージメントを図っています。
特にTikTokなど動画SNSでは、味集中カウンターの様子や調理のこだわりを短い動画で紹介し、若年層や海外ファンの心を掴むコンテンツを展開しています。
加えて、一蘭は公式アプリもリリースしており、店舗検索や待ち時間確認、電子スタンプカード機能などでリピーター顧客へのサービスを強化しています。
インバウンド向けのプロモーション
外国人観光客向け施策としては、上述の多言語対応(英語・繁体字中国語・簡体字中国語・韓国語のメニューや案内に加え、訪日客の動線上に店舗を配置する戦略が見られます。
東京・新宿や浅草、大阪・道頓堀といった主要観光地に積極的に出店し、深夜まで営業することで観光客が訪れやすい環境を整えました。
また、日本に来られない海外ファンに向けては、ラーメンの海外通販にも取り組んでいます。
2018年には海外向けECモール「ZENMARKETPLACE」を通じて一蘭の即席ラーメンを販売し、アメリカ人ラーメンインフルエンサーと契約して情報発信する試みも行われました。
さらに各国の有名人やインフルエンサーの来店をSNSで紹介するなど、インバウンドPRにも注力しています。
既存客へのアプローチ
一方、従来のファンへのアプローチも忘れていません。
外国人で行列ができる店舗が増えても日本人ファンが離れないよう、一蘭では味の追求を一貫して続けるとともに、期間限定メニューの投入は極力避けています。
ブームに左右されない「いつ行っても変わらない安心の味」があるからこそ、日本人リピーターは行列を嫌っても他店へ流れず機会を見て戻ってくると分析されています。
さらに「替玉無料券付き年賀状」の販売や、地域限定グッズ(どんぶりやTシャツなど)の企画など、遊び心ある販促でファンとの結びつきを強める施策も展開しています。
行列の演出
行列についても、一蘭は意図的に席数やオペレーションを調整し「常に適度な行列ができる状態」を演出しているとの指摘があります。
待ってでも食べたい人気店であることを視覚的に示しつつ、行列中にメニュー案内やこだわりの掲示を読むことで期待感を高める効果を狙っているのです。
一蘭の店舗展開戦略
一蘭 柏店(千葉)。筆者撮影。
チェーン展開の戦略
一蘭の店舗展開は、「確実に勝てる場所で、独自スタイルを維持したまま展開する」という方針が貫かれています。
もともと一蘭は福岡・博多発祥の個店からスタートし、1993年に現在の経営陣が屋号を引き継いでチェーン展開を開始しました。
福岡市内で数店舗を成功させた後、徐々に九州各地や関東・関西の都市圏へと出店エリアを広げています。
進出先の選定にあたっては、ラーメン文化の根付く地域や集客力の高い都市が優先されました。
東京では新宿や渋谷、池袋などの繁華街、大阪では難波や道頓堀といった飲食激戦区に出店し、いずれも話題を呼んで行列店となっています。
地方都市においても札幌や仙台、広島など主要都市への出店に絞り、安易に郊外のロードサイド店などへは広げていません。
海外展開の戦略
海外展開についても、非常に計画的かつブランドイメージを損なわない範囲で行われています。
一蘭は2013年に香港に初の海外店舗(銅鑼湾店)を開店させ、以降2015年尖沙咀店、2017年旺角店と香港で計3店舗を展開しました。
米国進出は2016年10月にニューヨーク・マンハッタン店をオープンしたのが最初で、その後タイムズスクエア店やブルックリン店などニューヨーク市内で計3店舗を展開しています。
台湾にも台北本店(2017年)と別館の2店舗を構え、2024年現在、一蘭の海外直営店は合計8~9店舗程度に留まっています。
この数字は、他の大型ラーメンチェーンが数十~数百店規模で海外展開する例と比べると控えめです。
しかし一蘭は「無理なスピード出店はしない」との方針を掲げており、各店舗が確実に一蘭クオリティを再現できるよう細心の注意を払っています。
実際、海外店舗でも日本と同様に提供メニューは天然とんこつラーメン1種のみとし、味集中カウンターや替玉システムなど店内設備・サービスも日本と全く同じ形式を導入しています。
これにより海外においても「一蘭でしか味わえない体験」を提供し、現地で生活する日本人や旅行者から高い評価を得ています。
また、海外店舗で使用するスープ出汁や秘伝のタレも全て福岡の「一蘭の森」から空輸されており、味のばらつきを徹底的に排除しています。
このように手間暇をかけてでもブランドの統一性を守る姿勢が、一蘭の海外展開の特徴です。
顧客体験・サービス戦略
ラーメンに集中する、という体験
繰り返しになりますが、一蘭の顧客体験は、「ラーメンに集中できる」よう設計されています。
その中心にあるのが前述の味集中カウンターやオーダー用紙方式ですが、その他のサービス面でも独自の工夫が凝らされています。
例えば入店時、券売機で食券を購入するスタイルも早くから導入してきました。
食券機は自動で厨房側にもオーダーを通知し、客は席について好みを書くだけで料理が提供されるため、人と対面せずに注文が完結します。
また替玉(替え麺)の追加注文についても、テーブル奥のボタンの上に替玉プレートを置くだけで伝えられる「替玉システム」を開発しました。
この注文方法では、プレートを置くと「チャルメラ」の音色が鳴り、店員に声をかけなくても自動で替玉オーダーが通ります。
創業者の吉冨氏自らハンダごてを使って試作したというこのシステムは、声を出さずに済む利便性から導入当初より好評で、今では一蘭の象徴的なサービスとなっています。
接客の方針
接客方針としては、「必要最低限で感じが良い対応」を徹底しています。
一般的な外食チェーンのような過剰な掛け声や世間話は控え、呼び出し音やランプで状況を伝えるシステムを多用しています。
その結果、客は店員の存在を意識することなく、それでいて不自由も感じずに食事ができるバランスが取られています。
最新機器の導入
近年ではテクノロジーも積極的に活用し、さらなる省人化・快適化を図っています。
2024年には福岡の新宮店にて、全国の一蘭で初となる席ごとのタッチパネル注文システムを導入しました。
各席に設置されたデジタルパネルは、着席を感知すると自動で注文メニュー画面に切り替わります。
従来の紙のオーダー用紙で行っていた好み指定や替玉追加も全て画面上で可能となり、よりスムーズで非対面のオペレーションが実現しました。
現在は日本語表示のみですが順次多言語対応も予定されており、外国人客にとっても使いやすいシステムになる見込みです。
このような注文のデジタル化により、用紙回収や確認の手間が省かれ、スタッフは調理と配膳に専念できるようになります。
さらに、一蘭は電話問い合わせ対応にも自動音声システム(IVR)を導入し、全店で人手を介さず営業時間案内等を案内できるようにしました。
これらの投資は人件費削減だけでなく、ピークタイムでも待ち時間短縮やミス防止につながり、結果として顧客満足度を高めています。
総合的に見て、一蘭のサービス戦略は「システムによるおもてなし」と表現できます。
直接的な接客は控えめでも、代わりに考え抜かれたシステムと清潔・快適な環境で顧客をもてなすスタイルです。
その独自性は外国人にとっても新鮮な驚きで、「まるで未来のラーメン店のようだ」との声も聞かれるほどです。
一蘭の採用・人材教育戦略
一蘭は雑多な採用活動を実施せず、「まず人を見る」という哲学を徹底しています。
そして充実した教育環境のもとで、それぞれがやりがいを見出せるような仕組みを整えているのです。
その結果、なんと離職率は6%。
飲食業界の平均値が30%であることを考えると、驚くべき数値を保っているといえます。
研修制度とキャリアパス
一蘭は「人を大切にする経営」を掲げ、入社時には本社でビジネスマナーから接遇・調理までを徹底的に学ぶ導入研修を実施しています。
その後も店舗でのOJTと店長研修を組み合わせ、アルバイトにも十段階のライセンス制度を導入し、全員に明確な成長目標を提示しています。
ライセンス取得は昇給や正社員登用の条件となり、正社員は平均2〜3年で店長へ、さらにエリアマネージャーや本部職へと進むキャリアパスが整っています。
店長は調理に入らず経営に専念できる体制で、経営視点を磨ける点も特徴です。
評価・福利厚生
評価は定量指標と人間力を両立させた評価シートで半年ごとに面談し、アルバイトも月1回のフィードバックを受けます。
結果は昇給と年3回の賞与に反映されます。年間休日は120日超で、店長も必ず5連休を取得できます。
住宅・扶養・地域手当や社宅、図書室、自己啓発表彰など外食業界屈指の手厚い福利厚生により、離職率はおよそ6%に抑えられています。
採用方針と外部評価
採用では学歴よりも理念への共感と人間性を重視し、面接では「感謝の手紙朗読」など独自手法で価値観を確認します。
こうして集まった社員の満足度は高く、経済産業省「おもてなし経営企業選」や「ハイ・サービス日本300選」にも選定されています。
人材育成にはコストがかかりますが、サービス品質とブランド価値を高める好循環を生み出している点が一蘭の強みです。
参考:https://ichiran.com/recruit2018/culture.html
コロナ禍など社会的変化への対応
新型コロナウイルス感染拡大という社会的変化に対し、一蘭はその業態上の強みを活かしつつ柔軟な対応を見せました。
コロナ禍でも黒字
感染拡大初期から注目されたのは、一蘭の味集中カウンターが「コロナ対策として理想的」だという点です。
元々隣席との間に壁があり、正面も簾で遮られて飛沫リスクが低いため、ソーシャルディスタンスを保った食事が可能でした。
実際、2020年の外食産業が大打撃を受ける中で、一蘭は感染防止策を講じながら多くの店舗で営業を継続し、同業他社が軒並み赤字に陥る中でも黒字を確保しました。
2020年12月期の売上高は151億6,000万円で前年度比減収ながら6億5,800万円の最終利益を計上しており、コロナ禍でも収益を出せた数少ない外食企業となりました。
これは、味集中カウンターによる仕切りやオーダー用紙方式が結果的に「非接触型サービス」として機能し、お客様からも安心して利用できる店との評価を得たことが大きいと分析されています。
「一蘭のスタイルにコロナ禍が予想外の付加価値を与えた」とも評され、逆風下においてもブランドの強みが発揮されました。
感染対策と事業継続の両立
もっとも、一蘭自身はこの状況に慢心することなく、積極的に感染対策と事業継続の両立に努めました。
全店舗での消毒や検温、従業員のマスク常時着用はもちろん、座席数の一時削減や営業時間短縮にも迅速に対応し、公式サイトで各店の対応状況を随時案内しました。
また、コロナ禍で急増した在宅療養者や医療従事者を支援するため、自治体を通じて自社のカップ麺を大量寄贈するといった社会貢献活動も行っています。
営業面では、外出自粛で来店客が減る中、自社通販サイトを強化してお土産用ラーメンセットやカップ麺の販路を拡大しました。
ECサイトを2020年にリニューアルした結果、アクセス数・売上とも大きく伸び、会員登録者数も順調に増加したと報告されています。
ポストコロナを見据えた動きで成功
さらにポストコロナを見据えた動きとして、インバウンド需要の回復にいち早く対応しました。
2022年後半から外国人観光客が戻り始めると、営業時間や定休日の見直し、人気店の増床リニューアルなどで受け入れ体制を強化しました。
前述のようにデジタル化も推進し、人手不足が深刻化する中でもサービス品質を維持できるようにしています。
これらの戦略の結果、一蘭はコロナ前を上回る業績回復を遂げました。
営業利益も過去最高水準となり、「コロナ特需」だけでなく企業体質の強さを示す形となっています。
まとめ
一蘭のマーケティング戦略を紐解くと、その成功の鍵は「独自の顧客体験の追求」と「徹底した品質管理」にあることが明らかになりました。
味集中カウンターに代表される独自のシステムは、単なる奇抜なアイデアではなく、顧客がラーメンに集中できる環境を提供し、パーソナライズされた一杯を味わえるという唯一無二の価値を生み出しています。
これにより、特に女性客や一人客といった従来のラーメン店のターゲット層とは異なる顧客層を開拓し、インバウンド需要も取り込むことに成功しました。
また、単品特化戦略による味の追求、高価格設定にもかかわらず顧客が価値を感じるブランディング、そして口コミやSNS拡散を重視したプロモーション戦略は、効率的かつ強力な集客に繋がっています。
さらに、コロナ禍という予期せぬ状況下でも、既存のビジネスモデルが非接触型サービスとして機能し、いち早くEC強化やデジタル化を進めることで、危機を乗り越え、むしろ成長を加速させました。
一蘭の徹底した人材教育と高い離職率の低さも、安定したサービス品質とブランドイメージを維持する上で不可欠な要素です。
これらの戦略はそれぞれが独立しているのではなく、互いに有機的に連携し、一蘭というブランドの強力な基盤を形成しています。
一蘭の事例から、顧客の潜在ニーズを深く理解し、それに応える独自の価値を提供すること、そしてその価値を支える盤石な組織体制を築くことが、持続的な成長を実現するための重要なポイントであることが学べるでしょう。
参考文献・出典: 一蘭公式サイトichiran.comichiran.com
社長インタビュー記事sbbit.jpsbbit.jp
マーケティング専門記事note.comyamatogokoro.jp
業界ニュースレポートfoodrink.co.jpdata-max.co.jp など。
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この記事を書いた人
